ニュースの概要
EUのグリーンウォッシュ対策が、企業の広告や表示の現場を実際に動かし始めた。調査によると、企業の22%が、根拠を示せなかった環境上の主張を撤回するか修正した。背景にあるのはEU指令2024/825である。この指令は包装、広告、ウェブサイトなど消費者が目にする幅広い媒体に及ぶ。「グリーン」「エコ」といった漠然とした表現には、認められた優れた環境性能の証拠が要る。持続可能性ラベルも、認証制度か公的機関の制度に基づくものでなければならない。環境への取り組みを語る前に、まず証拠を整える段階に入ったといえる。
引用元: EUのグリーンウォッシュ指令を受け、企業の22%が環境主張を撤回・修正(Moncloa)
分析・見解
「エコ」の一言が使えなくなった理由
指令2024/825は、包装、広告、ウェブサイトなど、消費者が接する幅広い媒体に適用される。「グリーン」「エコ」「環境にやさしい」といった漠然とした表現は、認められた優れた環境性能を示せなければ使えない。ここで変わったのは、証拠の水準である。これまでは、自社で計算した数値を添えれば足りる場面が多かった。これからは、第三者が確認できる形で根拠を示せるかどうかが分かれ目になる。
22%という数字から見える、残り約8割の事情
調査では、企業の22%が証明できなかった主張を撤回または修正した。これを「対応が進んだ」と読むだけでは足りない。残りの約8割は、もともと問題がなかったか、まだ点検していないかのどちらかである。後者が多ければ、行政の指導や競合他社からの通報をきっかけに、後追いで直すことになる。
しかも撤回は、広告文を差し替えれば終わる話ではない。包装の刷り直し、店頭にある在庫の扱い、販売店への連絡まで広がる。22%は、表に出た分だけの数字と見るのが妥当だろう。
ラベルと「将来の約束」にも網がかかる
持続可能性ラベルは、認証制度または公的機関の制度に基づくものに限られる。自社でデザインした緑の葉のマークは、見た目が立派でも使いにくくなる。業界団体の独自マークや自社基準のバッジは、手軽に安心感を与える手段だった。それが認証の裏付けを求められるわけである。
この指令は、植林などの相殺(=別の場所での削減分を差し引く考え方)だけを理由に、製品が気候に中立だと示すことも問題視している。「2030年までに実質ゼロ」といった将来の約束も、具体的で現実的な実施計画がなければ危うい。つまり、語る範囲が現在の実績だけでなく、未来の宣言にまで及ぶ。
環境表示は広告ではなく会計に近づく
私が注目するのは、環境表示の性質が変わりつつある点である。以前は広報の表現力が問われていた。これからは、帳簿のように根拠を記録し、監査に耐える形で保管する力が問われる。売上の数字に領収書が要るように、環境の主張にも根拠資料が要る。この感覚を持てた企業から、表示の見直しが速く進むだろう。
ビジネスへの影響
まず表示の棚卸しと「証拠台帳」づくりから
最初の作業は、自社が使っている環境表現の洗い出しである。商品の包装、ウェブサイト、広告、営業資料、展示会のパネルまで、すべて対象になる。見つけた表現ごとに、根拠データ、算定方法、第三者の確認の有無、最終更新日を一覧にまとめる。この一覧が証拠台帳である。台帳に根拠を書けない表現は、修正候補として赤印を付ける。広報だけで抱えず、法務、品質保証、調達の担当者を巻き込むことが肝心だ。
言い換えは「数字・範囲・出典」の三点セットで
漠然とした表現は、具体的な形に直すと生き残りやすい。たとえば「エコ素材」ではなく、「包装プラスチックの再生材比率30%(2025年自社測定・第三者検証済み)」と書く。数字、範囲(製品全体か一部か)、出典を揃えるわけである。カーボンオフセットを根拠に「カーボンニュートラル商品」とうたうのは避けたい。自社の削減実績と、購入したクレジットは分けて説明するほうが安全である。
撤回コストを抑える運用ルールを決める
包装の変更は費用が大きい。そこで、次の改版時期を見据えて優先順位を付ける。ウェブや広告などデジタル媒体から先に直し、包装は在庫消化に合わせて切り替える。新しい表現は、公開前に法務と品質保証が承認する流れにする。販売店や代理店には、変更の理由と新しい言い回しを事前に伝える。独自ラベルを続けるか、認証を取るかも検討したい。認証費用と、表現を減らしたときの訴求力低下を比べて決めればよい。EU向けに輸出する日本企業は、日本語サイトの表現も同じ基準で見直しておくと、後の手戻りが少ない。
