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GREEN CLAIMS COMPLIANCE

グリーンウォッシュ規制の全体像、
四つの法域を一枚の地図に

日本の景品表示法と環境表示ガイドライン、EUのECGT指令とグリーンクレーム指令案、英国と米国の指針を、定義・根拠・運用の三点で見比べます。

複数の規制文書の束と小さな地球儀が置かれた会議テーブルを真上から写した写真
各国の規制文書

グリーンウォッシュという言葉に、定義は一つしかないのか

最終更新日:

本ページの制度の記述は、各法令・ガイドラインの原文と所管官庁の公表資料にある事実に限っています。個別の企業の表示を、グリーンウォッシュに当たると評価することはしません。

グリーンウォッシュは、実際には環境への配慮が乏しいのに、環境に配慮しているかのように見せかける行為を指す言葉として広く使われています。「グリーン(環境に配慮した)」と「ホワイトウォッシュ(うわべを取り繕う)」を組み合わせた造語で、1980年代に欧米の環境活動家が使い始め、1992年の地球サミットの前後に世界へ広まったと説明されています。

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ところが、環境省が2026年4月30日付で公表した説明資料には、グリーンウォッシュという用語の一般的な定義は文献上存在しないこと、誤解を招く環境主張を特定する際には解釈の余地とグレーゾーンが存在することが、はっきり記されています。つまり、「これはグリーンウォッシュだ」と言い切れる線は、法令が定めているわけではありません。法律が問題にするのは、個々の表示が一般消費者に誤認を与えるかどうか、表示の根拠が客観的に示せるかどうかという、より具体的な点です。

同じ資料は、もう一つの用語として「グリーンハッシュ」を挙げています。実際には行っている、あるいは行おうとしている環境の取組を、批判を避けるために過少にしか伝えない、あるいは公表しないことを指す言葉です。規制の環境が不明確だと「下手なことは言わないでおこう」という心理が働き、市場の発展を妨げるおそれがあるため、グリーンウォッシュの防止とグリーンハッシュの抑制を両方とも進めることが、制度設計の目的として示されています。

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本サイトが各国の規制を整理する際の立場も、ここに置いています。環境に関する主張を控えさせることが目的ではなく、主張を行う場合に、どの根拠をそろえ、どの説明を添えれば制度の求める水準に近づくのかを、一次資料から確認できる形で示すことが目的です。

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日本の枠組み:景品表示法と環境表示ガイドライン

日本には、環境広告だけを対象とする特別法はありません。環境に関する表示は、他の商品・サービスの表示と同じく、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)で規律されます。中心となる規定は二つです。第5条第1号は、商品やサービスの品質、規格などについて、実際のものや競争事業者のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示(優良誤認表示)を禁じています。第7条第2項は、合理的な根拠を示す資料の提出を求められた事業者が、期間内に提出しないとき、または提出した資料が合理的な根拠と認められないときは、その表示を優良誤認表示とみなす不実証広告規制を定めています。

違反が認められた場合、消費者庁は第7条第1項に基づく措置命令を出すことができます。さらに第8条第1項に基づく課徴金納付命令の対象となる場合もあります。環境表示の分野では、2022年12月23日に消費者庁が公表した、生分解性をうたう表示に関する一連の措置命令が、典型的な運用例として知られています。この件の詳細は日本の環境表示ルールと実務で取り上げます。

景品表示法を補う形で、環境省は「環境表示ガイドライン」を定めています。2013年3月の改定版を2026年にあらためて見直す作業が行われ、環境省の説明資料によれば、環境表示のあり方に関する検討会が2025年9月29日から2026年2月3日まで3回開かれ、2026年2月16日から3月18日までのパブリックコメントを経て、3月31日に公表されました。環境省のガイドラインのページは、この版を「環境表示ガイドライン(令和8年3月改定)」として掲載しています。

改定版の骨格は、事業者が自己宣言で行う環境表示について、国際規格であるISO 14021(日本産業規格JIS Q 14021)に準拠することを求める点にあります。そのうえで、まず確認すべき事項として「5つの基本項目」を掲げ、国際規格への準拠、さらに取り組むことが望ましい推奨事項という順に、三つの段階で構成されています。適用の範囲も明確で、景品表示法の対象になる表示に加え、商品やサービスの取引に直接関係しない環境表示、たとえば事業活動、イメージ広告、企業姿勢などの表示も対象に含まれます。

ここで押さえておきたいのは、このガイドラインが法令そのものではないという位置づけです。事業者の自主性を尊重することを原則にしつつ、国際規格への準拠を求めるものであり、違反に対する制裁を定めた規定ではありません。ただし、景品表示法の運用で合理的な根拠が問われる場面では、ガイドラインの考え方が実務上の参照点になります。

なお、公共調達に関しては、グリーン購入法の環境物品等の表示を対象に、供給者適合宣言の枠組みで信頼性を確保するためのガイドラインも別に整備されています。民間の消費者向け表示とは目的が異なるため、本サイトでは取り扱う範囲を民間の環境表示に絞っています。

EUの枠組み:ECGT指令の適用開始と、停止したグリーンクレーム指令案

EUの動きを読むうえで最も混同されやすいのが、名前のよく似た二つの文書です。一つは「グリーン移行に向けて消費者に力を与える指令」(Empowering Consumers for the Green Transition、略称ECGT、指令(EU) 2024/825)であり、もう一つは「グリーンクレーム指令案」です。両者は別のものとして整理する必要があります。

ECGT指令は、2024年2月28日に公表され、加盟国は2026年3月27日までに国内法化し、2026年9月27日から適用すると定められています。2026年10月時点では、すでに適用が始まっています。この指令は、不公正取引慣行指令(UCPD)の付属書に、あらゆる状況で不公正とみなされる行為を追加する形で、環境に関する主張を規律します。法律事務所の解説などでは、次の行為が追加されたと整理されています。

  • 認められた環境性能を示さずに行う、「環境に優しい」「エコ」「グリーン」といった一般的な環境主張
  • 認証制度に基づかない、または公的機関が設定したものではない持続可能性ラベルの表示
  • 製品全体や事業全体について、実際には特定の一側面にしか当てはまらない環境主張
  • 製品区分のすべてに法令上求められる事項を、その商品の特徴であるかのように示すこと
  • 温室効果ガスのオフセット制度のみを根拠に、製品が環境に中立、またはプラスの影響を持つと主張すること

将来の環境性能に関する主張、たとえばカーボンニュートラルの目標についても、明確で客観的、公開されていて測定可能であり、独立して検証できる実施計画の裏付けがない場合は、誤解を招くものとなりうるとされています。対象は主に事業者から消費者への取引(B2C)です。国内法化の進み方は加盟国ごとに異なり、たとえばイタリアは2026年の立法令第30号で消費者法典を改正しました。他国の状況は、各国の公表資料で確認する必要があります。

一方のグリーンクレーム指令案は、2023年3月に欧州委員会が公表し、環境主張を行う際の外部の第三者機関による検証や、EU市場で使える環境ラベルの要件などを定める内容でした。2024年6月にはEU理事会が「一般的アプローチ」と呼ばれる修正案を示しましたが、2025年6月に欧州委員会が法案を撤回する意向を発表し、その後の三者協議も開かれないまま経過しています。環境省の2026年4月の説明資料は、法案化の作業は事実上停止しており、動向を注視している状況だと説明しています。日本企業が欧州向けの表示を見直す際には、成立していない指令案ではなく、すでに適用が始まっているECGT指令と各国の国内法を基準にするのが、現時点での整理です。

英国と米国:指針が中心だった国の運用が変わりつつある

英国では、競争・市場庁(CMA)が2021年9月に「グリーン・クレーム・コード」を公表しています。これは、事業者が環境に関する主張を行う際に、消費者保護法令を守るための考え方を示した指針であり、それ自体が法律ではありません。大きな転換は、2024年のデジタル市場・競争・消費者法(DMCC法)によって起きました。同法の消費者保護に関する規定は2025年4月6日に施行され、CMAは裁判所を経由せず、消費者法違反を自ら認定して制裁金を科せるようになったと、複数の法律事務所が解説しています。制裁金の算定方法や上限などの詳細は、法令の原文と英国政府の公表資料を確認してください。

米国では、連邦取引委員会(FTC)の「グリーン・ガイド」が長く基準として参照されてきました。1992年に公表され、1996年、1998年、2012年に改正されています。連邦官報には、2022年12月20日付で、このガイドの見直しに関する意見募集が掲載されました。ガイドは法令ではなく指針であり、法的な拘束力を持たないものの、FTCが不公正・欺瞞的な行為を判断する際の考え方を示すものと位置づけられています。見直しの結果は、FTCの公表資料で最新の状況を確認する必要があります。州レベルでは、ガイドを州法に取り込む例もあると紹介されています。

各法域の枠組みを、四つの観点で見比べる

ここまでの内容を一覧にします。同じ「環境表示」でも、根拠となる規範の性質、事業者に求められる行為、行政が動ける範囲は国ごとに異なります。表の記載は、前述の一次資料と解説資料で確認できた範囲に限っており、判断の優劣をつけるものではありません。

法域中心となる規範規範の性質環境表示に固有の規定直近の動き
日本景品表示法(第5条第1号、第7条第2項)、環境省の環境表示ガイドライン法律と、国際規格に準拠した自主的なガイドライン環境広告に特化した法律はなく、一般の表示規制で運用環境表示ガイドラインを2026年3月に改定
EU不公正取引慣行指令、ECGT指令((EU) 2024/825)指令(加盟国が国内法化)一般的な環境主張、持続可能性ラベル、オフセットに基づく中立表示などを規律ECGT指令は2026年9月27日から適用。グリーンクレーム指令案は停止
英国消費者保護法令、CMAのグリーン・クレーム・コード法律と、法的拘束力のない指針環境主張に特化した法律はなく、コードが考え方を示すDMCC法により、CMAが2025年4月から制裁金を直接科せる
米国FTC法、FTCのグリーン・ガイド法律と、法的拘束力のない指針ガイドが環境主張の考え方を示す2022年12月にガイドの見直しの意見募集を開始

2026年10月時点、各所管官庁の公表資料および法律事務所等の解説に基づく。最新情報は一次資料で確認してください。

実務で最初に確認したい三つの問い

規制の全体像を踏まえると、環境に関する表示を点検する担当者が最初に確認したい問いは、次の三つに整理できます。

一つ目は、その表示が「どの市場の、誰に向けたものか」

国内の消費者向けであれば景品表示法が、欧州の消費者向けであればECGT指令と各国の国内法が、それぞれ前提になります。同じ文言でも、日本では根拠資料を整えれば足りる場合があり、EUでは認証制度に基づかないラベルというだけで禁止の対象になることがあります。市場ごとに、使ってよい言葉と添えるべき説明が違うという点を、最初に洗い出すのが現実的です。

二つ目は、表示の「範囲」が正確か

環境省の改定ガイドラインが掲げる5つの基本項目のうち、あいまいな表現を避けること、説明文を付けること、製品のライフサイクル全体を考慮することは、いずれも「何についての主張か」を明確にするための項目です。製品の一部の工程や一つの側面にしか当てはまらない事実を、製品全体の特徴のように見せていないかを確認します。

三つ目は、根拠資料を「提出できる形」で持っているか

景品表示法の不実証広告規制では、合理的な根拠を示す資料の提出が求められます。環境省のガイドラインのコラムは、その資料の要件として、提出資料が客観的に実証された内容であること、表示された効果や性能と提出資料で実証された内容が適切に対応していることを挙げています。検証に必要なデータと評価方法にアクセスできる状態を整えておくことが、国内外の規制に共通する備えになります。

一次情報の確認先

本サイトは環境表示・グリーンウォッシュ規制に関する制度と業界を公開情報から整理したものであり、個別の広告表示の適法性や法的判断に関する助言ではありません。表示の可否は最新の法令・ガイドライン原文と専門家(弁護士等)にご確認ください。